指先のユーロビート
vol.3 重ならない指先
夜の公園、ふたりの姿。
けいとに会えたのは久しぶりだった。
けんたろうは、彼女の前で言葉につまる。
「……会いたかったよ、けいとさん」
けいとも、彼に背を向けたまま、そっと答える。
「私も。でも、今は我慢しないといけないの」
ほんのわずかな時間。
それが今のふたりに許された精一杯だった。
――けいとさんは今や、Midnight Verdictのリーダー。昔のように自由に会うことなどできなくなった。
そして自分も…けいとも知らないもうひとつの顔、「Synaptic Drive」のキーボーディストとして活動を始めている。
けいとは、ふいにけんたろうの手をとり、その指に自分の指先をそっと重ねる。
ほんの少し――夜風の中で伝わるぬくもりが、たまらなく愛しい。
「けんたろうちゃん。私も、あなたに触れていたい。…でも、今はだめなの。」
けんたろうは何も言えず、ただ頷くだけ。
「私も簡単に会いに来られる立場じゃなくなったの。…苦しいけれど、仕方ないよ」
けいとが微笑む。その瞳に宿る寂しさに、けんたろうの胸が締め付けられる。
(本当は、全部話したい。自分ももう、逃げ隠れせず、自分を貫くと決めてSynaptic Driveを始めたんだ、って。でも…今はまだ言えない)
けいとが小声で囁く。
「私もずっと、けんたろうちゃんのこと考えてる。だから…負けないで」
「……うん」
「いつかまた、笑い合える日まで――頑張ろう。自分の場所で、全力で」
髪をそっと撫でてくれるけいとの手が、たまらなく愛しい。
けいとが立ち去り、けんたろうは夜の空を見上げる。
すれ違う指先。その距離は切ないほど遠い。
でも、愛しい人のため、自分を隠し、秘密を抱え、Synaptic Driveとして走り出すしかなかった。
(全部話せる日は、きっと来る。その日まで…絶対に負けない)
――。
次の日の朝、けんたろうと同じ学校の生徒・梓もまた、偶然そのすれ違いを目撃してしまうが、「本当はそんな関係ではない」と思われたいけんたろうは、普段通りの顔で日常に戻る。
誰にも言えない秘密を胸に、バンド、青春、そして恋が新たな形で動き出していた。
けいとに会えたのは久しぶりだった。
けんたろうは、彼女の前で言葉につまる。
「……会いたかったよ、けいとさん」
けいとも、彼に背を向けたまま、そっと答える。
「私も。でも、今は我慢しないといけないの」
ほんのわずかな時間。
それが今のふたりに許された精一杯だった。
――けいとさんは今や、Midnight Verdictのリーダー。昔のように自由に会うことなどできなくなった。
そして自分も…けいとも知らないもうひとつの顔、「Synaptic Drive」のキーボーディストとして活動を始めている。
けいとは、ふいにけんたろうの手をとり、その指に自分の指先をそっと重ねる。
ほんの少し――夜風の中で伝わるぬくもりが、たまらなく愛しい。
「けんたろうちゃん。私も、あなたに触れていたい。…でも、今はだめなの。」
けんたろうは何も言えず、ただ頷くだけ。
「私も簡単に会いに来られる立場じゃなくなったの。…苦しいけれど、仕方ないよ」
けいとが微笑む。その瞳に宿る寂しさに、けんたろうの胸が締め付けられる。
(本当は、全部話したい。自分ももう、逃げ隠れせず、自分を貫くと決めてSynaptic Driveを始めたんだ、って。でも…今はまだ言えない)
けいとが小声で囁く。
「私もずっと、けんたろうちゃんのこと考えてる。だから…負けないで」
「……うん」
「いつかまた、笑い合える日まで――頑張ろう。自分の場所で、全力で」
髪をそっと撫でてくれるけいとの手が、たまらなく愛しい。
けいとが立ち去り、けんたろうは夜の空を見上げる。
すれ違う指先。その距離は切ないほど遠い。
でも、愛しい人のため、自分を隠し、秘密を抱え、Synaptic Driveとして走り出すしかなかった。
(全部話せる日は、きっと来る。その日まで…絶対に負けない)
――。
次の日の朝、けんたろうと同じ学校の生徒・梓もまた、偶然そのすれ違いを目撃してしまうが、「本当はそんな関係ではない」と思われたいけんたろうは、普段通りの顔で日常に戻る。
誰にも言えない秘密を胸に、バンド、青春、そして恋が新たな形で動き出していた。