いつか、桜の季節に 出逢えたら
第11話 1月24日 定期通院①
「……少し、貧血があるようですね。眩暈やふらつきなどは、ないですか?」
今日は、退院後の定期通院のため、母と病院に来ている。
担当医が、母と私に採血検査の説明をする。
「全然ないです」
心身ともに元気なので、そんなことを言われるとは想像もしていなかった。
「……この子、大丈夫でしょうか。生まれつき体が弱いんです。あの時の影響が、今頃出てきているということでしょうか……」
私より母の方が、よほど心配している。
「貧血傾向とはいえ許容範囲ですし、女の子ですから一時的なものかもしれません。もし、身体症状などが見られた時には、また受診して下さい。記憶の方はどうですか?」
医師は、穏やかに尋ねる。
「……何も思い出せません。でも、気になることはあります。できないはずのことができるんです。勉強が苦手なはずなのに普通にできたり、初めて触れるはずのゲームの操作ができたり、筆跡も違うみたいで……こんなことあるのでしょうか。もしかして私は、別の人格なのでしょうか。二重人格とか……」
担当医は、少し考えてから口を開いた。
「検査では、脳神経系には問題がないようでした。二重人格となると、精神的な要因を考えた方が良いかもしれません。次回の受診時に、専門科の予約も取っておきましょうか」
「……よろしくお願いします」
*****
帰宅後、リビングのソファに座った私の前に温かいココアを置き、母が深刻な表情で言った。
「……絵梨花ちゃん、二重人格って……本当なの?」
ーー確証は持てない。
たまに見える記憶の断片は、絵梨花のものなのかもしれない。
でも、絵梨花を示す欠片が、自分のものとは思えない時がある。
「たまに、気になることがあって……でも、気のせいかもしれません。自分で考えるより、先生に聞いてみた方が確実かなと思ったんです」
母を心配させまいと、できる限り明るく振る舞った。
「……でも、精神的な要因って言われたわ……その要因がもしかしたら、お父さんとお母さんにあるのだとしたら、絵梨花ちゃんに申し訳なくて……」
いつも明るく朗らかな母が、弱々しい声でそう言うので、なんだか私の方が申し訳ない気持ちになる。
「……お母さん。私との間に、一体何があったんですか?」
今日は、退院後の定期通院のため、母と病院に来ている。
担当医が、母と私に採血検査の説明をする。
「全然ないです」
心身ともに元気なので、そんなことを言われるとは想像もしていなかった。
「……この子、大丈夫でしょうか。生まれつき体が弱いんです。あの時の影響が、今頃出てきているということでしょうか……」
私より母の方が、よほど心配している。
「貧血傾向とはいえ許容範囲ですし、女の子ですから一時的なものかもしれません。もし、身体症状などが見られた時には、また受診して下さい。記憶の方はどうですか?」
医師は、穏やかに尋ねる。
「……何も思い出せません。でも、気になることはあります。できないはずのことができるんです。勉強が苦手なはずなのに普通にできたり、初めて触れるはずのゲームの操作ができたり、筆跡も違うみたいで……こんなことあるのでしょうか。もしかして私は、別の人格なのでしょうか。二重人格とか……」
担当医は、少し考えてから口を開いた。
「検査では、脳神経系には問題がないようでした。二重人格となると、精神的な要因を考えた方が良いかもしれません。次回の受診時に、専門科の予約も取っておきましょうか」
「……よろしくお願いします」
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帰宅後、リビングのソファに座った私の前に温かいココアを置き、母が深刻な表情で言った。
「……絵梨花ちゃん、二重人格って……本当なの?」
ーー確証は持てない。
たまに見える記憶の断片は、絵梨花のものなのかもしれない。
でも、絵梨花を示す欠片が、自分のものとは思えない時がある。
「たまに、気になることがあって……でも、気のせいかもしれません。自分で考えるより、先生に聞いてみた方が確実かなと思ったんです」
母を心配させまいと、できる限り明るく振る舞った。
「……でも、精神的な要因って言われたわ……その要因がもしかしたら、お父さんとお母さんにあるのだとしたら、絵梨花ちゃんに申し訳なくて……」
いつも明るく朗らかな母が、弱々しい声でそう言うので、なんだか私の方が申し訳ない気持ちになる。
「……お母さん。私との間に、一体何があったんですか?」