いつか、桜の季節に 出逢えたら

【番外編】俺の学力向上タイムリープゲーマー嫁(リアル)が可愛すぎる

彼女と初めて会ったのは、高校二年の冬だった。

見慣れているはずの義妹の姿なのに、性格がまるで別人で、事故による記憶喪失が原因らしいと聞かされた。
趣味も嗜好も、得意不得意まで違っていて、もはや“別の誰か”になっていた。


人懐っこく、表情も豊かで、ふとした仕草が可愛い。
趣味も合うし、自然体でいられる。
勉強が苦手だった俺が大学生になれたのも、彼女のおかげだ。

俺は、その“別人格”の彼女に、どうしようもなく惹かれていった。
誰にも取られたくなくて、気持ちが暴走して驚かせたこともあったが、あの頃の俺はいっぱいいっぱいだったから、どうか許してほしい。

彼女も好意を持ってくれていたようだが、訳あって、八年間、離れ離れになることになった。
八年後に会える保証も、何もないままに。

彼女は、「自分ではない誰かと幸せになって」と言い残して消えてしまったが、あの時の俺には、そんなこと到底考えられなかった。


……とはいえ。

実は、彼女のいない毎日を送り続けるのが寂しすぎて、誘惑に負けそうになったことはある。
幸か不幸か、自分からは何もしなくても、勝手に女が寄ってくる外見をしているから。

彼女が俺の隣にいた頃は、他の女に目が行くことなんかなかったのに。
面倒でしかなかったのに。

彼女の代わりが欲しかったのだろう。


そんな時、たまたまオンラインゲーム内で、彼女のプレイスタイルや、癖を持つ人と出会った。

この時の彼女は俺のことを知らないし、「詮索しない、会わない」と約束していたから、素性を聞くことなく、とりあえず友達になってみた。

一緒に遊べば遊ぶほど、彼女なんじゃないかと思うようになった。

大学二年になって、初めてオフ会があった。
「会わない約束は守れるから」と、遠目に彼女を探した。

姿は違うけど、表情、仕草から、俺の好きな彼女だとわかった。
確証は持てないけれど、それでも好きだと思えるくらいには、彼女の面影があった。

数年前の彼女は年上だったが、今ここにいるのは同い年だから、あの頃よりも少しだけ幼く(?)見えて、それがまた可愛かった。


彼女を見つけたらしい俺は、しばし悩んだ。

おそらく、今の俺は、すぐに彼女と仲良くなれる。
”約束の八年後”まで待たなくても、正式に付き合うことができるーーはず。


でも、彼女が過去に飛ばされなければ、義妹の願いは叶えられない。
両親とも、微妙な関係のままだろう。

それに、俺、大学生になれてない。

改変したら、どんなふうに変化するのかわからない。
突然、大学に行けてない俺に変身するってこと?
それとも、俺の存在自体、消滅すんの?

改変リスクが、デカすぎる。


それに、今の彼女と付き合ったとして、うまくいかなかったらどうする?
こっちで別れることになったら、全部が無駄になる。

それに、軽々しく近付いてくる男には、(なび)かなかったよなーー。
そいつらと同類だと思われたら、敬遠されるのでは?

どう考えても、あと五年後に迎える方が、勝率上がるーーというか、確実じゃん?

ということで、彼女との約束を守りつつ、彼女を確実に手にいれるために、俺の忍耐の五年間が始まったのだ。
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