吹奏楽に恋した私の3年間

静かな冬へ

冬休みに入る少し前から、先輩たちはアンコンの練習を始めていた。

音楽室の扉の向こうから、繊細で力強い音が響いてくる。

その音は、私たち一年生の演奏とはまるで違っていて、聴くだけで圧倒された。


「すごいね…」 芽衣歌ちゃんがぽつりと言った。

「うん、自分たちの音と全然違う、、、」

私はそう答えた。 その曲の名前もわからないけど、心に残る音だった。


私たちはまだ、あんなふうに吹けない。

でも、いつかあんな音を出せるようになりたいって思った。

それが、冬休み前の最後の部活だった。


そして、冬休みに入った。

部活は完全にお休み。 楽器に触れることもなくて、学校も静かだった。


「なんか、さみしいね」

金管三姉妹♡のグループLINEで話したり、して、ふゆやすみはすごくひまだった。

冬休みの終わりが近づくにつれて、 「早くみんなで合奏したいな」って思うようになった。

音がない時間が、音の大切さを教えてくれた。 そして、仲間と過ごす時間のあたたかさも。


冬休みが終わって、部活が再開した。

久しぶりに楽器に触れて、音を出した瞬間、ちょっとだけ「やっぱり楽しい!」って思った。

でも、冬は何の舞台もなかった。

演奏会も、発表も、目立つイベントはゼロ。

その代わりに始まったのは、来年のコンクールに向けた“基礎練祭り”。

毎日同じようなメニューが続いて、正直ちょっと飽きてきた。

でも実際そんなに基礎連基礎連とは言われてなく、ボーっとみんな吹いてる感じだった。

でも、そんな中でポップスの曲の練習が始まった。

ちょっと明るくて、リズムが軽くて、吹いてて楽しい。

「この曲、好きかも」 「ユーフォの低音、めっちゃかっこいいよね」 芽衣歌ちゃんと話しながら、少しずつ気持ちが上向いていった。

舞台はないけど、音楽は続いてる。

地味な基礎練の中にも、仲間との会話や、ちょっとした発見がある。

それが、冬の部活の“静かな楽しさ”だった。
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