キミノオト

【14】


季節は春。

見ごろを過ぎた桜が、儚く散り始めている。

熱愛報道の話題はすっかり落ち着いてきた。

今でもたまに思う。

ファンのみんなの心が寛大だから、私のように冴えない一般人が相手でも運よく応援してもらえた。

だけど、彼を知っている誰もが、彼の横に真にふさわしい女性は私ではないって思ってるはず。

なんの取柄もないような一般人じゃなくて、例えば女優さんとか、アナウンサーさんとか、華やかで才能にあふれた人。

考えれば考えるほど良くない方向に進む思考。

最近またネガティブになりがちで自己嫌悪してしまう。

でもそうなってしまうのにはちゃんと理由がある。

最近は前にも増して陽貴君が忙しすぎて、すれ違いの生活が続いていた。

一応、メッセージのやりとりはある。

会えないけど連絡はとれてるから、一緒に住む前と同じ状況。

なのに、連絡が返ってくるだけで幸せと思えていたあの頃と違って、今は寂しい気持ちになってしまう。

いつの間にか欲張りになっていたんだな。

最近は寝顔しか見れていないな。

寝顔がみれるだけでも贅沢だと思いたいけど。

私が眠っている間に帰ってきて、出勤する頃は眠っている。

まともに顔を合わせたのはいつが最後だったかな。

同じ家に住んでいるはずなのにな。

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