休暇中の御曹司と出会ったら、愛され過ぎてもう無理です。
「じゃあ、本を返しに来ただけだから」

古賀さんがすぐに扉に手をかけて部屋を出て行こうとしたから、私は咄嗟(とっさ)に「え……」と声が出てしまった。

振り返った古賀さんを見て、私は慌てて首を振って「何の用事もない」ことを必死に手振りで伝える。

それでも古賀さんがじっと私を見ているから、会話を終えやすいように「すぐに返して下さってありがとうございます」と義務的な言葉を無理やり付け足した。





「本当は夏奈ちゃんの顔が見たくなっただけだけれど」




「っ!」





一気に表情に動揺が表れた私を見て、古賀さんが笑っている。

「ごめんごめん。いつも夏奈ちゃんの反応がかわい……」

ピピピピピピ、と古賀さんの言葉を遮るようにスマホの通知音が鳴る。
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