英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 なんてあっさり許してしまうあたり、だいぶ心が傾いているのを自覚する。だってこう言ってはなんだけど、余計な圧のない彼は文句なしに格好いいし、ああして頭を下げる姿は、まるで耳を垂れた大型犬のように可愛く見えたから。

 それよりも急を要する件とはいったいなんだろうと思いながら、横たえていた体を起こした。ルシウス様はすでに踵を返し、奥に見える扉に向かって歩き出している。

 去り行く彼の背中をうしろから眺めて、その手元にあるものに気づき、ぎょっとした。そこには、先ほどまでわたしを慰めてくれていた黒猫が首根っこを掴まれ、観念したような顔をしてぶら下がっていたのだ。

「ああっ、その猫は……! 旦那様、ちょっとお待ちください!」
「は?」

 思わず大声を上げながら立ち上がり、彼を引き留めていた。
< 101 / 398 >

この作品をシェア

pagetop