英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 長居するつもりはなかったのに、訓練を眺めているうちにその場に居ついてしまった。
 本場の剣技は迫力が違う。特に部下と手合わせをするルシウス様は強すぎて、抜群の見応えがある。挑んでくる兵士を赤子の手を捻るがごとく簡単にいなしてしまうのだ。

 別の区画では、漆黒と白銀の二体の獣が、それぞれ屈強な男たちを相手に躍動している。
 間近で見て、あの二匹は普通の豹ではないと認識を改めた。書物で読んだばかりの知識だが、この世界特有の「魔獣」という存在だと思い至る。それもルシウス様が制圧し、しもべとした「契約獣」という代物だ。

 感心して見惚れていると、ふいに目の端に閃光が走り、肩をすくめる。白銀の獣が目くらましの技を放ったらしい。物語の中にだけ存在していた魔法のようなものが現実にあるなんて、心が躍らずにはいられない。
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