英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 男はルシウス様の正体を察するや否や、踵を返して逃げ出した。
 しかし突進する細道の先には、ロキ君が立ちふさがっている。このままでは男に乱暴に突き飛ばされて、あの子が怪我をするかもしれない。

「ロキ君……避けて!」

 声を張り上げたが、悠然と構えた少年は、そこをどこうとしない。

「どけっ、ガキが!」
「……はん! 低能な生き物め」

 固唾を飲んで見守る中、信じられないことが起きた。前傾姿勢になったロキ君の姿が、みるみるうちに形状を変え、変身したのだ。
 体は黒い毛に覆われ、四本の足は太く、胴体はどっしりと――いつか訓練場で見た黒豹型の魔獣が、少年に代わってそこに現れた。
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