英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ただ眺めているうちに、部屋もわたしもピカピカに磨かれていった。正直、嵐に巻き込まれたような状況に、頭がついていかない。

 やり遂げた感を滲ませた彼女たちが挨拶に来たのでお礼を伝えると、満面の笑顔が返ってくる。入り用の際にはいつでも声をかけてほしいと言って、ふたりは部屋を下がっていった。

 呆然と扉を見つめていると、メイドと入れ替わるように、飄々とした不思議な少年――ロキ君が姿を見せた。

「よぉ、元気そうだな」

「ロキ君! 昨日はありがとう。帰りは遅かったの? 危ないことはなかった?」

「誰の心配をしてるんだ? こちとら魔獣の中でも高位の存在、魔豹族のロキ様だぜ。見ただろ? オレ様の真の姿を」

 金色の瞳がキラリと細められる。路地裏で魔獣に変身する瞬間を、直接目にしてもなお半信半疑であったが、この表情と雰囲気を見れば、間違いなく同一の存在だと確信できた。
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