英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 思いっきり捻ってみても、夢から覚める気配はない。そんなわたしを見て、少年は悪戯な笑いを漏らした。

「夢ならいいと後悔しても、もう遅い。おまえがルシウス様の妻でいられるのも、あと三カ月らしいな。『扱いを改めないなら離婚も辞さないわよ!』なんて、執務室の外までおまえが自爆する声が聞こえて――おっと、盗み聞きしていたわけじゃないぞ、へへ」

「わたしが、そんなことを言ったの……?」

 そのあたりから、わたしの記憶にもある執務室でのワンシーンと重なってくる。「離婚に応じよう」と答えた男性の、冷然とした表情がまざまざと思い出された。まさに犬も食わない夫婦喧嘩、引いては別れ話の真っ只中だったのだ。

(そんな修羅場の途中に、日浦香澄であったわたしの魂がアレクシアの体に宿ったということ? なんて間の悪さなの……!)

 ただ呆然とするわたしを、少年は引き続き、得意げな顔をしていじってくる。
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