私とキミたちとの調和
Episode2~憧れから序曲へ~
俺は春田 奏響。俺には歳が離れた上の兄貴がいる。俺がまだ小学高学年くらいの時に、幼馴染みの男が2人いる。柳 慧と井間 優と鬼ごっこしてた時。兄貴が友達と何かをしに行く姿を見て、俺たちは気になって着いて行ったんだ。
着いて行くと駅前のフリースペースで兄貴が友達とバンドというものを組んでいて、楽器を弾いているところを見たんだ。その時を気に慧と優とバンド活動を始めた。
学校から帰ると土手や公園に集まって練習していた。俺は兄貴に憧れてベースだ、兄貴から使ってないというベースを譲って貰えたんだ。
慧は小さい時ピアノやっていたことからキーボード、何事でも器用だったドラムは優がやるのことになったんだが、俺と優は初心者で、慧は上手くて、悔しかったのを今でも覚えている。
そしたら、いつの間にか優がドラム上手くなっていたりとか、最近好きなドラマーを見つけたんなだとも言っていた。俺も負けないように、必死に毎日ベースの練習に励んだ。
バンド続けている内に気づいた。兄貴と俺たちのバンドの違うこと、肝心のボーカルが居なかったことに。ちょっと物足りないなと思いがらも、楽器を弾くこと事態は楽しかったから、3人でバンド活動していた。
学校で流行っていたバンドをカバー曲を弾いたり、上手い人の練習動画を見て真似たり、兄貴のバンドに練習見てもらっていた。
兄貴を真似て、駅前でストリートライブをやってみたりして、それなりにバンドを楽しんでいた。
「ねぇ、見てみて!」
「あ?どしたんだ、井間。」
優がスマホを見せてきた。
「最近このコウって人のがね、動画がバズっててね!見てみたら、めっちゃギターが上手いんだよ!」
優が言うコウと言う人は、その人は顔を出さずギターと歌声を載せている動画で、優のスマホを見ていると衝撃的だった。その動画では、MADE MELODYのControlの、弾いて歌ってみたの企画動画だった。めっちゃ上手くて鳥肌たった。
「確かに上手いな。」
「この人の声、透き通ってて素敵だよね!」
ーーー負けてらんねぇな。と、火をつけて
俺らは、更に練習を重ねて。俺はそこからコウにハマりしていて、動画を見ては刺激を貰っていた。
俺らは中学生から徒歩圏内の高校に入学して、速攻バイトを探した、俺はラーメン屋、慧はCDショップ、優はファミレスのバイトを始めた。あと生徒会に軽音部としての申請をした。とにかく部室が欲しかった。周りを気にしないで楽器の音を出せるの場所を求めていたから。
駅前のストリートライブや公園でやるのも楽しいけど、やっぱり落ち着いて練習できる場所がほしいよな。俺もコウに負けない情熱をベースの音に乗せていた。
ある日の放課後、課題のプリントを忘れたのを鞄の中見て気付いた。
「悪い忘れ物した、取ってくる」
「りょーかい!」
「早く戻ってこいよ」
2人に伝えて、部室を抜け出して、教室に向かう廊下を歩いていると綺麗なアコギの音が聞こえた。
「なんか、聞いたことある気がするな。」
教室に近づくにつれて聴こえる音が強くなる。もしかして、Ms.DrainのPure Horizonか?なんとなく、聞き覚えのある曲調だなと思いながら廊下を歩くと1-B、俺も柳も優もいる教室からアコギの音が聞こえる。
「もしかして同級生?」
まさか同じクラスにアコギやっている人居たかなと思いながら教室のドアを開けると、ビクッとした姿を見た。ドアの音がびっくりするのなんかわかる気がする。
「春田くんか。」
教室でアコギを弾いていたのは、穂川煌夏さんだった。俺の名前覚えてるというのも、教室でアコギ弾いているのも意外すぎて、頭が混乱してきた。
Ms.DrainのPure Horizonのアルペジオを穂川さんは弾いて見せてくれた。
「すげー上手いな。」
まるで風が優しく遮るような心地いい音だ。そこから穂川さんに興味を持ち始めて、穂川さんともっと話したくなった、まさかここまでアコギやバンドが好きだなんて知らなかったから。
そう思ったのに、慧のやつに引き戻されちった。
「また、穂川さんのギター聞きたいな」
「穂川さんって、黒紫で赤紫特徴であの美人の?」
優が食いついてきた。
「そうそう、さっきに忘れ物取りに行ったらさ。穂川さんがアコギ弾いててさ、めっちゃ引き込まれちゃった!」
「ふーん。僕も穂川さんとはまだ話したことないな〜」
人当たりで女子とよく話しているイメージの優でも話たないのか。そのわりに俺と会話してくれたのはちょっと嬉しいし、穂川さんの印象が大分変わった。
「春田が、そこまで言うなら聞いてみたいかもしれんな。」
「僕も!クールな穂川さんが弾くギターか、絵になるんだろうな!」
確かに、アコギを弾く穂川さんは幻想敵だったなと思い出した。次の日の朝、また話したくなって穂川さんに話しかけてみたんだ。教室内で人と絡んでるの見た事なかったけど、意外と話してくれる人なんだなと知ったし。
「おはよう、穂川さん」
俺あまり人に話しかけるの緊張しないけど、この時だけは少しドキドキした。
「おはよう」
その一言が帰ってきただけで救われた。今日の穂川さんはアコギではなく、エレキギターのケースを持っていた。
穂川さんアコギだけじゃなくエレキまで弾くんだと思ったら、益々話してみたくなったんだけど。そこから更に話しかけようとしたのに、慧め!また邪魔しやがって!
穂川さんも席に行っちゃうし、チャイムはなっちゃうし。休み時間に話しかけるタイミングもなかなか見つけられなかった。そしたら、もう昼休みになってしまった。
「穂川さん、どこ行ったんだろう。」
「知るかよ。」
慧は、冷たいし。と穂川さんを探していると階段を登って行く姿を見つけて、俺と慧は追いかけた。
「な、な!穂川さんエレキギター持ってるだろ!?」
「うっせぇな、見りゃわかる。」
「優、先生に呼ばれちったしな。もったいな。」
穂川さんに話しかけるべく、屋上のドアを開ける。
「あ、おい。空気読めよ、アホ田!」
「穂川さーん!」
なんか後ろから慧の聞こえたけど
「……ほら、穂川さん不機嫌そうな顔だぞ。」
穂川さんのエレキギターが、迫力的で一つ一つのフレーズが鮮明で、俺と慧はもう何も聞こず、何も言葉にすることも忘れていた。完全に穂川さんの魅力に呑まれてしまった。
屋上の風に澄まされて、青い空のように爽快で豪快に響き渡る。
「はぁ。さいこう。」
この音の余韻に溶けてしまえ。
「ここまでとはな。」
「だな。」
「それで、春田くんと柳くんは私になんの用?」
「ね!放課後、俺たちとセッションしてくれねぇかな!」
ーーーセッション?
「ごめん、無理。」
「え。」
「今からバイトに行かないとダメでさ。明日ならいいよ?」
私も春田くんがやっているバンドの音、気になっていたし。ずっと1人で弾いてきたから、それに1度くらいは音と音が互いにぶつかるのに、混ざり合うような感覚味わってみたいしな。
「なら、明日の放課後だね。」
「うん。またあした。」
「ちなみに穂川さんなんのバイトしてんのー?」
音楽好きのバイト先なんて
「ライブハウス!!」
音楽がある場所っしょ!
「ぷはっ!どんだけ、穂川さん音楽バカなの!!」
「音楽バカ?そんなの上等よ。」
私はライブハウスでのバイトを見つけて、神すぎてすぐ面接に行ったわ。バイトに行かないと行けない時間なので、屋上を後にした。
「でもライブハウスのバイトか、確かに楽しそう。」
「だな。つか、あんなにあっさりとOK出るんだな。」
「やったぜ。」
「こりゃ、練習しねーとだぞ。」
「慧!優呼べ!!」
俺らだって、こんな刺激を与えられてはダメだ。俺たちも十分音楽バカで、急遽予定してなかった部室で練習をすることになった。
「へぇ、それで明日穂川さんとセッションすることになったのかー。」
「おう!」
「……しかし、あれは相当な実力だぞ」
「そーくんはともかく、けーくんが絶賛するなんて余っ程なんだね」
「どういう意味だよ。優。」
「あはは、そんなむくれないでよ!」
「おら練習やんなら、やるぞ」
「だね。やるからには全力でやらなきゃねー」
「よし、やるか。」
俺はベースのコードをアンプにさして、慧のピアノと優のドラムが絡む音が部室に響く。
「俺たちも十分音楽バカだよな。」
「まぁな。」
「あはは〜」
だって、さっきまで少し日が傾いたくらいだった空が、もう真っ暗だった。次の日の放課後。
「穂川さん!」
「春田くん。」
「昨日の約束覚えてるか?」
「セッションの話でしょ……覚えてる。」
私は机の中にある、教科書やノートとかをカバンにしまっていく。カバンに積めたら、ギターケースを背負った。
「よし、部室行くか!」
「わかった。」
廊下の窓の外を眺めながら、部室の場所は知っているから、時には立ち止まって気になった物を、少し写真を撮ったりしながら、春田くんと柳くんの後ろを歩く。
写真撮ったりしていると、曲のインスピレーションが浮かんだりするんだよね。あと、単純に写真撮るのが好き。スマホのアルバムを見ていると軽音部の部室前に着いた。
ーーーガラッ
「遅かったな。何してたんだ?」
「なんでもいいでしょ。」
「まぁまぁけーくん!僕、井間優って言うんだ!よろしくね、穂川さん!」
「よろしく」
記念にこの光景も撮っとこうかな。
「うん、いい写真。」
私は荷物を置いて、ギターケースからギターを取り出して、ショルダーを肩にかけて、ヘッドのペグを回して、チューニングをする。
「うん、問題なし。」
「よし、やるか!」
「チューニングは、もう出来ているよ」
それぞれ楽器の準備が終わっていた。もう3人も私も、いつでも弾ける状態。これ以上ないかもというくらい、緊張感が空気に漂っているけど……私はいつも通り弾くだけ。
「何を演奏するの??」
緊張なのか、楽しみなのか、分からないけど。暑い訳じゃないのに汗が一筋落ちた気がした。
「単純にカバー曲でいいんじゃないか。」
「じゃあ、これでいいんじゃないかな?」
井間くんのスマホを覗くやる最近動画に上げられた、MADE MELODYのPick×UPだった。私もこの前やってみた動画上げたばかりで、この曲は弾けるから問題なかった。
「私も問題ない。」
いつでも弾けるように、私はギターを構えると、シーンと少し静まる空気が漂う。なんで楽器弾く前の静かな空気って、少し緊張感があるんだろうか。
「優、カウント頼むな?」
「OK!じゃあ僕がカウント入れるよー!1.2.3.....!!」
優がスティックを鳴らすカウントに合わせて、俺はベースを弾くが……穂川さんのギターの音がぐいっとこっちだと引っ張られてしまいそうだ。
「これは、凄いな。」
「負けてらんないね〜」
激しいのにギターの音なのに、きちんと混ざる演奏をしている。慧と優のサポートもしっかり感じられて、俺のベースが重点音に効いてて
ーーーなんで、こんな楽しいんだよ!?
「なんで、今まで穂川さんのこと知らなかったんだろうな。」
ずっと、ボーカル&ギターを探してた時間がもったいなかったくらい。穂川さんは逸材だった。俺たち初めて合わせたのに、慧と優をちらっと見ると2人もいつもより生き生きしてる気がする。
すげーな、これ。なんだよ、これ!
音の余韻が部室に響いてるのが、まだ聴こえる。まだ聴いていたいとさえ思ってしまうこの高揚感、たまらなくてヤバい。
「はぁ。はぁ。」
「あははーやばいね。これ。」
「穂川さん、ここまでやるなんてね。」
「春田くんたちこそ、やるじゃん。」
もう薄暗くなっていた空は、窓から一番星が見えたから、今日のところは帰宅解散した。
「まだ手震えてんだけど。」
「俺も緊張したのか、疲れた。」
「だねー、でもいい感じで良かったね!」
俺は穂川さんとバンドやりたいと思った。
春田くんたちとセッションした後、帰宅する道を遠回りして、写真を撮りながら、さっき3人に混ぜさせてもらって、MADE MELODYのPick×UPのセッションしたことを考えていた。
ギターの弦を弾いた瞬間、一人でやっていたものとは全然違っていた。音楽の何かがバチバチと空気に火花が飛んだ瞬間を見たんだ。これがお父さんがやっていたバンドというものなのかもしれない。
今までたくさんギターを弾いたり、ライブハウスで他のバンド見たりしたけど、この感覚を私は知らなかった。
春田くん、柳くん、井間くんもいい顔をしていた。凄いノリノリに楽しんでたのが、彼たちの楽器から伝わったし。楽器もそれなりに拘っている感じがいい。
春田奏響の使っているベース、Fender Precision Bass だから、私のエレキギターに反応したのも納得だ。黒のボディーが春田くんに似合ってた。
柳 慧のNord Stage 4キーボード、井間 優のPearl Reference Pureも悪くない。むしろあそこまで拘りがあるなら早めに仲良くなれそうだ。なんか私と同じ音楽バカな一面を見た気がした。
今日の夜空は一段と星が輝いて見えた。綺麗な夜空にスマホの撮影ボタンを押す。帰ってきて、お風呂から髪をバスタオルで乾かしながら棚にある紫のA4サイズのファイル。
「これまでに書き溜めていた、楽譜たちを解放する時なのかな。」
机の棚にある、楽譜と書かれた紫色のファイルにはいままで私が書き溜めてきた物たちだ。このファイルに全部入っているのだ。
いつかは両親と同じように、バンドをやりたいと思っていた。でもなかなかメンバーもいなかった。メンバーを探す目的もあったから、ライブハウスのバイトやってたんだけど…ここに運命が待っているとか、まさか、春田くんたちと、あんな感覚を味わうなんて。
……面白すぎるでしょ。
「春田くんからセッションを誘ってくれたし、今度は私から声掛けてみようかな。」
明日の時間割の教科書と一緒に楽譜の赤のファイルはリュックに入れて、私は余韻が抜けなくて、朝までヘッドフォンして弾いてしまった。
そしたら登校時に昇降口で春田くんにばったり合った。
「なんかクマできてないか?」
「気のせいじゃないかな。」
ギター弾いてたら、インスピレーションが湧いて、遅刻しそうになったとはさすが言えないな。
「おはようー!そーくん、穂川さん!」
「はよ。ふあぁ〜」
「あはは、けーくんおっきなあくびだね〜」
そう言えば、この柳くんと井間くんも同じクラスか!春田くんたちがよく一緒に仲良い印象があったし、もちろん名前は知ってたけど、クラス全員は把握出来てないのよね。
この2人の楽器の音とても良かったんだけど、柳くんがキーボードで、井間くんがドラムって少し意外だよね。
「あれ?穂川さん、目の下にクマ出来てるじゃん大丈夫?」
「全然平気。」
徹夜なんて日常茶飯事だからね。チャイムが鳴ったから席につかないとと向かおうとしたんだけど
「穂川さん」
「どうかしたの、柳くん?」
「これ、ホットアイマスクやる。」
柳くんの鞄からホットアイマスクが出てくるなんて意外すぎる!?
「おー、さすがけーくん気が利くね!穂川さんの可愛い顔にはクマ似合わないもんねー」
「ありがとう。柳くん」
柳くんから有難く、アイマスクを頂いてた。一時限目の授業が終わった、休み時間になって、窓の外を頬ずえしながら眺めてたら。
「穂川さん、穂川さん!!」
右隣の席の子と前の席の子、2人に話しかけられた。
「何かな?樋野(ひの)さんと花沢(はなさわ)さん。」
「名前覚えててくれたんだ、嬉しいな〜」
「ね!なんか、穂川さんってあんま話さないから覚えられてないと思ってた!」
春田くんにも同じ事を言われたな。私はギター弾きたいだけで、別に人と関わりたくないとかはない。でも春田くんやこの2人が言うのなら、私は無意識に壁を作っていたのかもしれないな。
「それより、穂川さん、春田くんたちと話してたでしょ?」
「何がきっかけなのかなーって気になっちゃってさ!」
なるほど、確かに。人気のあの3人なら気になる女子いるか。
「私ギターやってて。放課後弾いているところを春田くん見つかったの。それがきっかけ。」
ギターやっていること、別に隠している訳じゃないから。
「穂川さん、ギター弾けるんだ!かっこいいね!!」
「それでか!なるほどなるほど。」
「春田くん軽音部だったよね!?もしかして一緒に組むの?」
今この教室には、春田くん、柳くん、井間くんもいるのか……ここで言ってもいいか。
「まぁ、そのつもり。」
春田くんに目線を送る。春田くんも柳くんは驚いた顔をして、井間くんは嬉しそうに笑っている。クラスの人に隠したって仕方ないし、その内バレるのが目に見えるから。
……To be continued