「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 


「あっれ~? どうしたの?
 やけにご機嫌だねえ」

 牛乳配達に来た小太郎が牛乳瓶を渡しながら笑って珠子に言う。

「別に、そんなことないけど」

 家に入った珠子は、無心に薬研で珈琲豆をゴリゴリしながら思う。

 ……ご機嫌なのでしょうかね? 私。

 確かに。
 この間、岩崎様に水族館に誘われてから、ちょっとソワソワしています。

 評判の浅草水族館にも行きたかったけど。

 上野動物園の小さな『うをのぞき』にしたのは――。

「あまり人がいない方が落ち着きますので」
 って、岩崎様には言ったけど。

 本当はお母様がお父様と歩いただけで楽しかったという上野動物園に、岩崎様と二人で行ってみたかったからなのかも。

 珈琲の香りのする牛乳を飲んだあと。

 珠子は店番をしながら、新聞を読んでいた。

 今日の天気が絵で描かれている。
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