クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 しばらく互いに黙っていたが、沈黙を破ったのは智田SVだった。彼は既に、いつも通りの顔に戻っている。

「今の発言は忘れてくれ」

 彼は淡々とそう言う。その言葉は、私の胸をちくりと刺した。

「つい口から飛び出てしまったが、本来は言うべき言葉じゃ――」
「忘れられません」

 彼の言葉を、遮ってしまった。
 失恋したと思っていた相手が、私のことを好きだったのだ。ここで引き下がっては、彼とはなにもなかったことになってしまう。

 智田SVは言葉を止め、こちらを見る。その瞠目した姿を見ていると、頬が先ほどよりももっと熱くなる。

 だけど、ここまで言ったのだ。なにも言わないわけにはいかない。私はそっと、震える唇を開き言葉を紡いだ。

「私も、あなたのことがずっと――」

 言いながら、彼への気持ちがあふれてくる。
 最初は、憧れの上司だと思っていた。だけど彼のドジを見て、そのギャップにひどく心を揺さぶられた。

 恋に失敗することが怖くて、この気持ちは恋ではなく推しへのそれだと言い聞かせてきた。それでも、ドジを見せたり私を助けてくれる彼に、どんどん心惹かれていった。

 ずっと前から、憧れを超えていた。そう、私は彼のことが、ずっと――。

「ずっと、好きでしたから」

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