Pandora❄firstlove
そしたら、舌を出した彼女。
このバカ野郎。
この親父にも、変なこと吹きやがったな。
「……というか、こんなに深夜なのに騒いじゃいけないだろ」
「まぁ、でもここ使われてない特別病棟やし」
「え?」
「ここは、新しくできる予定の病棟なの。でもこんだけ人がいないとおばけが出たりして。先生気おつけてね。っていうか、守ってよー」
「そんだけ元気なら、守られなくても向こうから避けてくれるはずだ」
「お前さんは、院長に相当目をつけられてるんやのー。普通だったらこんなふうに特別待遇されるはずないのやで?」
でも、どうして俺なんかに?
そんな疑問は、「先生と私は初恋で両思いになってから付き合ってて」と嘘を吹き込む愛に掻き消された。
「嘘を吹き込むな!!」
「甘い恋愛をも出来ない青春時代を、補ってくれたって良いじゃーん!!恋バナをもしてくれないくせに!!」
「恋バナだったら、ワイもあるで」
「え!?!?本当?!?」
「あぁ。娘の帰りを待っているとき、嫁と毎晩ーーー」
嫌な予感がして、すぐさま海さんの口をふさぐ。
「さぁ、さぁ。夜も深い、お前は早く寝ろ」
「海さん大丈夫なの?」
泡を吹いて倒れた海さん。
大丈夫だ。
かろうじて息はしてる。
3つ目のベッドに海さんを寝かせると、俺も眠くなって静かに目を閉じた。
久々に楽しいと感じた。
こんなに、楽しいやり取りを人間と交わしたのは、何年ぶりだろう。
こんな幸せがずっと続けばいいけど、そう長くないのかも。
そんなことを思ったが、これから先しばらくはこの二人と付き合うことになる。
ちょっとした、居場所が出来てしまったのは少し嬉しかった。
*