Pandora❄firstlove
真実
もうあの事件から、愛と合わせる顔がなくて困った。
だからこそ、こうして林檎先生と歩いているわけで。
でも俺は………心做しか足が浮ついた気分でもなんでもない。
憂鬱という言葉に支配されて、体が重い。
教師というものは、冬休みなんてものはないと言わんばかり。
ーーー休みの期間俺は帰省を拒否された親戚の家に逃げることもできずに林檎先生とデートする羽目になっていて。
大晦日の午後、俺は林檎先生と共に神社に駆り出されていた。
全くと言っていいほど、全然心躍らなかった。
嫌いな女とのデートほど苦痛なものはなくてーーー苦虫を潰したような胸焼けが襲う。
ちゃっかり手を合わせて、この女と早く離れられますようにと願うばかりで。
現実は変わらない。
「あ………お願い饅頭買っていきませんか?」
魅惑のピーチの香りを振りまく、あざといピンクのコートを振りまいた林檎先生が振り向く。
勝手にしてほしいが……。
「そうだな」
と無理に笑ったりしている自分に自己嫌悪する。
俺の金で結局はお願い饅頭を食べるその姿は、やはり妥協なしの美貌を持っているからなんだろうか。
とても皮肉にも絵になっていた。
チラホラと俺たちを指差して、カッコいいだの可愛いだの言っている輩がいたが、全然嬉しくなんてない。
なんというか………やはり、舞い上がっているのは彼女だけで、価値観が少々ズレて、息苦しい。
一週間一緒にいたが、直ぐ様そう感じてしまう。
「なぁ……聞きたいことがある」
「なんです?」
「どうして俺を、選んだんだ?」
「秘密です」
唇に人差し指を押し付けたと思えば、それを俺の唇に押し付けやがって。
面倒くさいな………そうゆうの大嫌いなのに。
「貴方こそ、どうしてーーー愛を選んだんですか?」
熱々のお願い饅頭を食べれば、全てを忘れられるだろうと考えた俺か馬鹿みたいで。
むせた。