その優しさに溺れる。〜一線を超えてから、会社の後輩の溺愛が止まらない〜
「……ねえ」
グラスを見つめながら、詩乃がぽつりと言う。
「あのね、恥ずかしい話なんだけど……聞いてくれる?」
「はい」
「婚約者がいたの。十年以上付き合ってて、最近ようやくプロポーズされて、やっと家族になれるって思ってた」
ゆっくり語る詩乃に、湊はただ頷いた。
「でもある日、連絡しないで彼の家に行ったら、知らない女の人といて……」
声が震え、言葉が途切れる。
「……そういうこと、してて」
「……」
「頭が真っ白になった。結婚しようって言ってくれたばかりなのに……」
言葉と一緒に涙があふれる。甘い声、肌の音、呼ばれていた名前が自分のものではなかった事実が、まだ離れない。
「——深雪さん」
湊の声が静かに現実へ引き戻す。顔を上げると、彼が真っ直ぐ見つめていた。その瞳にごまかしはない。
「……ごめん、泣くつもりじゃなかったのに……」
顔を背けようとすると、湊が静かに言った。
「深雪さんは、そんな扱いをされていい人じゃないです」
「……え?」
「そんな男、もう忘れてください。あなたにそんな顔をさせる奴なんて、はやく忘れた方がいい」
本気で言われたとわかり、胸がぎゅっとなる。忘れたい——忘れられたらいいのに。
「思い出が、声が、笑顔が、頭から離れないの」
「十年以上いたんだよ。家族になろうって約束したんだよ……」
「忘れろって、そんなの……わかってる。でも…っ」
声が震え、涙が止まらない。それでも湊は何も言わず、ただ隣で見守ってくれる。
真っ直ぐな瞳が詩乃を捉えていた。やさしさがじんわり心に広がる。
唇がかすかに震え、信じられない声で、それでも確かに彼に向かって──
「……じゃあ…橘くんが…慰めてくれる…?」
グラスを見つめながら、詩乃がぽつりと言う。
「あのね、恥ずかしい話なんだけど……聞いてくれる?」
「はい」
「婚約者がいたの。十年以上付き合ってて、最近ようやくプロポーズされて、やっと家族になれるって思ってた」
ゆっくり語る詩乃に、湊はただ頷いた。
「でもある日、連絡しないで彼の家に行ったら、知らない女の人といて……」
声が震え、言葉が途切れる。
「……そういうこと、してて」
「……」
「頭が真っ白になった。結婚しようって言ってくれたばかりなのに……」
言葉と一緒に涙があふれる。甘い声、肌の音、呼ばれていた名前が自分のものではなかった事実が、まだ離れない。
「——深雪さん」
湊の声が静かに現実へ引き戻す。顔を上げると、彼が真っ直ぐ見つめていた。その瞳にごまかしはない。
「……ごめん、泣くつもりじゃなかったのに……」
顔を背けようとすると、湊が静かに言った。
「深雪さんは、そんな扱いをされていい人じゃないです」
「……え?」
「そんな男、もう忘れてください。あなたにそんな顔をさせる奴なんて、はやく忘れた方がいい」
本気で言われたとわかり、胸がぎゅっとなる。忘れたい——忘れられたらいいのに。
「思い出が、声が、笑顔が、頭から離れないの」
「十年以上いたんだよ。家族になろうって約束したんだよ……」
「忘れろって、そんなの……わかってる。でも…っ」
声が震え、涙が止まらない。それでも湊は何も言わず、ただ隣で見守ってくれる。
真っ直ぐな瞳が詩乃を捉えていた。やさしさがじんわり心に広がる。
唇がかすかに震え、信じられない声で、それでも確かに彼に向かって──
「……じゃあ…橘くんが…慰めてくれる…?」