からかわないでよ、千景くん。



「なずなのタイプが笹村とか、どーでもいいよ」



その声は、聞いたことのない冷たさだった。

言葉も、いつもの千景くんじゃないみたいで。

口元が震える。

何か言いたいのに、声が出ない。



「だって…」


「だって?…俺に関係ある?それ」



千景くんの言葉は、冷たくて、鋭くて。

胸の奥に、すっと刺さった。


(ない、けど)


ほんとに、千景くんの言う通り。 千景くんには関係ない。


でも—— なんで私、こんなに必死に否定しようとしてたんだろう。

笹村くんのこと、好きとかじゃない。

人として「いいな」って思ってるのは、ほんとのこと。

それなのに、千景くんには、知られたくなかった。

なんでだろう。



「…ごめんなさい」



なんて言えばいいのか分からなくて。 ただ、千景くんに謝った。

謝る理由も、はっきりしない。

どうしても、目を合わせられなかった。


< 35 / 277 >

この作品をシェア

pagetop