からかわないでよ、千景くん。
「なずなのタイプが笹村とか、どーでもいいよ」
その声は、聞いたことのない冷たさだった。
言葉も、いつもの千景くんじゃないみたいで。
口元が震える。
何か言いたいのに、声が出ない。
「だって…」
「だって?…俺に関係ある?それ」
千景くんの言葉は、冷たくて、鋭くて。
胸の奥に、すっと刺さった。
(ない、けど)
ほんとに、千景くんの言う通り。 千景くんには関係ない。
でも—— なんで私、こんなに必死に否定しようとしてたんだろう。
笹村くんのこと、好きとかじゃない。
人として「いいな」って思ってるのは、ほんとのこと。
それなのに、千景くんには、知られたくなかった。
なんでだろう。
「…ごめんなさい」
なんて言えばいいのか分からなくて。 ただ、千景くんに謝った。
謝る理由も、はっきりしない。
どうしても、目を合わせられなかった。