からかわないでよ、千景くん。

「私、今すごい嫌なひとっ…だよ、ね？ なんで、嫌なのかも…分からないのっ…おかしっ、かな…？」



涙が止まらない。
言葉もぐちゃぐちゃで、何を言ってるのか自分でも分からない。

そんな私を、千景くんは優しく抱きしめてくれた。



「なずなは、まだまだだね」


「…え？」



抱きしめられていた体が、ふわっと離れていく。



「もっと見たい。泣いてる顔」



千景くんは、私の顔を見て嬉しそうに笑っていた。


（…酷い。やっぱり意地悪）



「もう、泣かないもん…」



そう言うと、千景くんは「残念」と笑った。


その笑顔を見た瞬間—— 胸が、キュってなる。