オレンジ色の奇跡
「あぁ……店で見たときは気づかなかったけど、車についてるタバコの匂いでな。
でも、俺の知ってるウタはこんな話し方しねぇけど」
バックミラーに“ウタ”を睨む。
「はぁー、なんで梨海の友達の男がお前なんだよ。
あと、ウタって呼ぶな。耳が腐るだろ、それに俺がどんな話し方をしてもお前には関係ないな」
ため息と同時にスイッチを切り替えた様に話し方を変えるウタ。
「呼んだって耳なんか腐んねぇよ。久しぶりに会ったってつーのに」
「俺は、会いたくなかったけどな。
ケースケの隣の…えぇっと――舞希だ、舞希。新しい女?ていうか、お前女いらなかったんじゃないのか?」
「それは昔の話だろ?」
「啓輔ー、どういう知り合い?」
「なんだよ、俺のこと忘れたのかよ?酷いな、あんなに可愛がってあげたのにさ」
「ウタ、祥也と会ったことねぇだろ」
「あるよ、会ったこと」
「はぁ?いつ?」
「先月の頭かな?そいつの親父さんに会いに行ったとき」
「親父に会いに……?もしかして、カイさんと一緒に来た人?」
「そうそう」
「カイさんは分かるけど、なんでウタが行くんだよ?」
「お前には関係ない。ほら、着いたぞ。
…………梨海?起きてください?空港に着きましたよ」
スイッチの切り替えがはやいな……。