オレンジ色の奇跡



「おはよー。ケースケくん」

 横を見るとあたしの携帯片手にコーヒーを持っている朔兄の姿。

『えっ?ささ朔真さん?!』

 相当驚いているのかあたしにまで聞こえる大きな声で朔兄の名前を叫んだ。

「うるさいな。鼓膜が破れるだろ?
それより、俺達に報告することあるよね?
いつまで言わない気なのかな?

うん……うん……。
ふーん。今日言おうと思ってたんだー。
じゃあ、楽しみにしとくよ。
時間?そうだな9時半でどう?
分かった。じゃ、また」

 ボタンを操作した後何食わぬ顔で携帯を返す。

「はい」

「はいじゃないわよっ!!
岩佐先輩に何を言ったの?」

「うん?来れば分かるからさ。
9時半にはこっちに来ると思うよ」

「え?くっ9時半?!」

 バッと時計を見上げれば、既に1時間を切っていた。

 朝ごはんは、あともう少しで出来上がるためそれほど問題はない。

 エプロンに付いているポケットに両手を突っ込み、他の家事で終わっていないものがあるかどうか考えれば、残りは洗濯だと気づいたのと同時に自分の格好を思い出した。

「あっ……」

 自分の服装を見るため顔を下げれば、クリーム色の生地に赤ラインの大きめなチェック模様エプロンに、フリース素材で膝にかかるくらいのワンピース。

 朔兄と言い合っている場合ではないことに気づき、再び朝ごはん作りにかかった。


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