氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「普段通りにできるかしら……? 同じ側の手と足を同時に出して歩いてしまいそうだわ」
「ご安心ください、お嬢様。過去、緊張のあまりそのようになってしまったご令嬢は、他にもいらっしゃいます。それに、ドレスに隠れて足の動きは案外誤魔化(ごまか)せるものですよ」

 安心させるようにエラは力強く言い切った。なにせ、それは自分の経験談だっだから説得力は抜群だ。

「ふふ、エラがそう言うなら心強いわ」
「お任せください。夜会では微力ながらわたしも全身全霊をもってサポートさせていただきます」
「ありがとう。けれど、エラもちゃんと夜会を楽しんでちょうだいね」
「はい、ありがとうございます、お嬢様」

 ほのぼのとふたりで微笑みあっていると、廊下から慌ただしい足音が聞こえてくる。その足音が部屋の前で止まったかと思うと、ひとりの使用人が扉のノックもそこそこに部屋の中に飛び込んできた。

「お、お、お、お嬢様!」

 息を切らしながらわたわたしている使用人にエラは眉をひそめた。

「落ち着いてください。お嬢様の前ですよ」
「す、すみません。ですが、奥様が今すぐにいらっしゃるようにと……!」
「まあ、何かしら? マダムのドレスは昨日届いていたし……もしかしたら、公爵家からオクタヴィアの瞳が届いたのかもしれないわね」

 知らせてくれてありがとうとその使用人に微笑むと、リーゼロッテはクリスタの待つ部屋へと向かった。

「お義母(かあ)様、参りましたわ」

 部屋に入るなり目に飛び込んできたのは、部屋の中央に立つジークヴァルトの姿だった。

「ジークヴァルト様!?」

 驚いて思わず声を上げると、ジークヴァルトの後ろからひょっこりとクリスタが顔のぞかせた。

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