貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
帰り道に想う
詩乃を家まで送って行った明人は、すぐに自宅への帰路についた。
寒い夜だが、心は暖かい。ついさっきまで隣にいた女性の楽しそうな姿が、胸の中に火を灯してくれたようだった。
あのあとレストランで少し会話を楽しんだあと、駅前のイルミネーションを観に出掛けた。
クリスマスイブ当日の装飾はそれはそれは見事で、明人はさぞ電気代が高くつくのだろうなと内心思っていた。
イルミネーションの灯りを写す詩乃の輝く瞳ばかりを、ずっと見ていた。
それにしても、年内に彼女に会えてよかったと思う。
年末年始を一緒に過ごそうと誘えるほど、深い関係になっているとはいえないだろう。
そして年明けは、勤務先との面談が立て込んでいる。
もちろん、転勤の要望を取り下げてもらうためだ。
しばらくは(といっても短い期間だが)ゆっくり会えないだろう。
だから年末より少し前の平日に、たまには外食にでもどうかと思って誘ったのだった。
都合がつきそうなのがクリスマスイブの日だったのは、偶然に近い。
これまで、恋人同士の特別な日としてのクリスマスは、無縁の人生だった。