貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 そのあとは、なんとなくぎくしゃくした時間が流れた。

 ホテルの中のレストランは、大衆割烹のような雰囲気だった。

 ちょっと上質なご当地の料理が、たくさんメニューに並んでいる。

 二人は、この地域でとれた野菜をふんだんに使った、おすすめの御膳を注文した。

「……! おいし!」

 小鉢に盛られた和え物を一口食べて、詩乃が驚きの声をあげる。

 野菜と練り物をあしらった小さな一品だが、丁寧に作られていることがはっきりと分かる。

 細かく切られたにんじんと、あられのような形の練り物に沁みている味が違う。

 それをみずみずしい香草の薫りがひとつの料理としてまとめあげていて、少しずつ味わって食べたい一品だ。

 他にも御飯、汁物、焼き物、小鉢の副菜や香の物がずらりと並んでいる。

「本当だ。美味しいですね」

 明人も、ほっとしたように言った。

「ね! いいホテルだね〜」
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