貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


「なんのお礼ですか?」

 明人はキッチンタオルで手を拭いながら、首を捻った。

「このあいだ。話聴いて、慰めてくれたでしょ」

 あの夜のことが、二人の間で思い起こされた。寒い日だった。

「あのあと仕事に行ったらね。やっぱり、ここがわたしの居場所だって思ったの」

 ここ数日、職場で感じたことを思い出す。

 なにか、職場で劇的な出来事があったわけではない。

 でも、着実に自分のやりたいことが出来て、色んな人と協力してのびのびと働けている。

 心から、今の仕事と職場を好きになれた。

「明人くんのおかげだよ。ありがとう」

 溢れるような笑顔を向けられて、明人はつられて穏やかに微笑んだ。
「私は何もしていませんよ」

 詩乃は、そういう人だ。

 底抜けに素直で、明るくて、自分が持っている元気を分け与えたいと思う人。

「そんなことないよ! 明人くんと話してると、元気になれる」

 明人が「本当に何もしていない」みたいな顔をしているものだから、詩乃はかえってムキになった。

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