宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「では神殿へと侵入するのは、旦那様とアデライーデ様、それにわたしの三人ということで。旦那様、それでよろしいですね?」
「ああ」
「では旦那様とアデライーデ様は、今のうちに十分休息を取っておいてください。最終準備はわたしが行っておきます」
リーゼロッテを取り戻すため、誰もが決意を固めるように頷きあう。その時使用人のひとりが、転がるように執務室に飛び込んできた。
「何事ですか?」
「狼煙が……グレーデン様の合図の狼煙が、王城方向の空に上がっています……!」
「エーミール様の狼煙が? 確認してきます。みな様はこちらでお待ちを」
隠し扉から屋上へと駆け昇り、マテアスは遥か上空を見渡した。暮れかけて見えづらいが、確かに王城の一角から白煙が立ち昇っている。
あれはエーミールに託した発煙筒だ。王城で使用した際、罰せられる可能性もある。どうしても連絡が間に合わない時のみに、緊急で使うようにと渡してあった。
(突入が早まったのか……!?)
血の気の多いバルバナスなら、無鉄砲なこともやりかねない。階段を駆け下り、すぐさま執務室へと逆戻りした。
「騎士団の調査はすでに始まったようです。一刻の猶予もありません。今すぐ神殿へと向かいましょう」
「やってやろうじゃない!」
意気揚々と拳をぼきりと鳴らしたアデライーデに、使用人が慌てて付け加えてきた。
「あと、アデライーデお嬢様に騎士として登城命令が来ております……!」
「なんですって! どうしてこのタイミングで」
出鼻をくじかれたアデライーデが、憤りの声を使用人に向ける。
「す、すみません! たった今王城から早馬が到着しまして」
「不審がられないためにも、アデライーデ様はひとまず王城へとお向かいください。神殿にはわたしと旦那様、ふたりで行って参ります」
この機会を逃すわけにはいかない。
リーゼロッテ奪還作戦は、あまりにも急な始まりを迎えたのだった。
「ああ」
「では旦那様とアデライーデ様は、今のうちに十分休息を取っておいてください。最終準備はわたしが行っておきます」
リーゼロッテを取り戻すため、誰もが決意を固めるように頷きあう。その時使用人のひとりが、転がるように執務室に飛び込んできた。
「何事ですか?」
「狼煙が……グレーデン様の合図の狼煙が、王城方向の空に上がっています……!」
「エーミール様の狼煙が? 確認してきます。みな様はこちらでお待ちを」
隠し扉から屋上へと駆け昇り、マテアスは遥か上空を見渡した。暮れかけて見えづらいが、確かに王城の一角から白煙が立ち昇っている。
あれはエーミールに託した発煙筒だ。王城で使用した際、罰せられる可能性もある。どうしても連絡が間に合わない時のみに、緊急で使うようにと渡してあった。
(突入が早まったのか……!?)
血の気の多いバルバナスなら、無鉄砲なこともやりかねない。階段を駆け下り、すぐさま執務室へと逆戻りした。
「騎士団の調査はすでに始まったようです。一刻の猶予もありません。今すぐ神殿へと向かいましょう」
「やってやろうじゃない!」
意気揚々と拳をぼきりと鳴らしたアデライーデに、使用人が慌てて付け加えてきた。
「あと、アデライーデお嬢様に騎士として登城命令が来ております……!」
「なんですって! どうしてこのタイミングで」
出鼻をくじかれたアデライーデが、憤りの声を使用人に向ける。
「す、すみません! たった今王城から早馬が到着しまして」
「不審がられないためにも、アデライーデ様はひとまず王城へとお向かいください。神殿にはわたしと旦那様、ふたりで行って参ります」
この機会を逃すわけにはいかない。
リーゼロッテ奪還作戦は、あまりにも急な始まりを迎えたのだった。