90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦
「…食べ終わるまで一緒にいろよ」
さっきまでの不機嫌さから寂しげな顔をされたら、腹が立っていたはずが可愛く見えてしまい、つい揶揄っていた。
「…向井さん家の鍋に移してきてください」
「…鍋なんてない」
「えー、ありませんでしたか?前に見た気がするんですけど」
「空いている鍋がないんだ。…いいから、上がってけ」
「仕方ないですね…食べ終わるまで一緒にいてあげます」
結局、食べ終わっても、なんだかんだと理由をつけて引き止められている気がしていたが、時計の針が刺す時刻を見たら、流石に帰らねばと思った。
「あっ、もうこんな時間…長い間お邪魔しました」
何もないとこで躓き転びそうになり向井さんの胸にとびこんいた。
「あっ、すみません」
ほんと、ドシだなあ…と彼の胸から離れようとしたが離してもらえない。
「お前、誘ってるのか?」
「な、なに言ってるんですか?そんな訳ないです。躓いただけですから」
「へー、俺の為に準備してたって言うから、それ、わざとなのかと」
彼がブラウスのボタンの最初の境目に指を指すので胸元を見たら、ボタンのかけ間違えを見つけ慌ててカーディガンで隠した。
「見ました?」
「見えてた」