これは形だけの結婚ですので!~剛腕パイロットは初恋のカタブツ妻を容赦なく溺愛する~【愛され最強ヒロインシリーズ】
髪はお辞儀をしても顔にかからないようにスプレーで固めたり、シニヨンやフレンチツイスト――夜会巻きでひとつにまとめたりする。

ちなみに私は、プライベートのメイクより少し派手な赤い口紅をしっかりと唇にのせ、顎のあたりで切りそろえた髪は耳にかけて、スプレーでガチガチに固めてある。

優はいつものシニヨンだ。


「は、はい」


彼女は、私の言う通りに二度大きく深呼吸した。


「うんうん、よく耐えた」


今にもこぼれそうだった涙をそっとハンカチで拭い、彼女のマスカラは無事に落ちずに済んだ。

搭乗前の打ち合わせ――ブリーフィングまではまだ時間がある。私は彼女の腕を引き、マネージメントセンターから少し離れた。


「どうした?」
「私……彼氏に二股かけられてて……」


顔を覗(のぞ)き込んで尋ねると、そう告白した彼女は眉をひそめる。


「そっか……」


あの、バカたれが!

優の彼は、別の航空会社のパイロットだ。

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