気まぐれヒーロー2
本城咲妃は、朝美にこう話を持ちかけた。
『花鳥さんのことは、もう怒ってないよ。花鳥さんも大輔への気持ちが強すぎて、あんな行動に出ちゃったんだよね。私もそういう気持ち、わかるから……ちゃんと理解してあげようと思うの。でね、朝美ちゃん。花鳥さんと仲良いよね?私、考えたんだけど──』
そうして、本城咲妃は朝美に翔桜の“ユウ”くんと“ヒロ”くんを紹介した。
『花鳥さんにも紹介してあげてくれない?やっぱり私は大輔が好きだし、大輔も花鳥さんには別の人を見てほしいって言ってるの。ね?花鳥さんにとっても、それがいいと思うんだ。失恋を癒すには、新しい恋をするのが一番でしょ?』
女神のように微笑みながら──そう言ったのだ、と。
大丈夫。私は、ちゃんと冷静でいられる。
ちゃんと、客観的に捉えられてる。
自分の中で渦を巻き始めた、黒く濁った感情を。
くすぶる炎が、今にも爆ぜそうに待ち構えてる。
本城咲妃。
その名を耳にしただけで、身を焦がすほどの憎悪が、静かに、だけど確実に広がっていく。
全ては、彼女が仕組んだこと。
朝美をも利用して。
最初から、朝美すら犠牲にして──翔桜の男達を使い、私を襲わせる計画だったんだ。
自分は手を汚さず、人を駒のように扱い、用が済めば切り捨てる。
さすがというべきか、その冷酷な手口には、感服すらしてしまうほど。
……と同時に、胸の底から怒りが込み上げる。
本城咲妃の顔を思い浮かべると、
“憎い”
私の中で今、とぐろを巻く醜い闇を表せる言葉は、それしかなかった。
「誰だその女」
タイガの素っ気ない声に、ハッとした。
自分でも知らないうちに、獰猛な衝動に飲み込まれていたことに気づき、少し怖くなった。
こんなんじゃいけない。
あの時の二の舞になるだけだ。
「もしかしてソイツか、お前を昨日やったのは」
背後からかけられた声は、タイガではなくハイジだった。
「……なんで昨日のこと、知ってるの」
「ケイジだよ」
愛想も何もない返しに、ああ、と小さく息を吐いた。
ケイジくんか。彼がハイジに話したんだ、昨日のこと。
私が、本城咲妃と取り巻き達に暴行されたことを。
別に口止めしたわけでもないし、ハイジと兄弟の彼がそれを話してたとしてもおかしくはない。
「何があったんだよ」
ハイジの低い声と、タイガたちの視線。
どれも同じ思いを孕んでいて、その真っ直ぐさに貫かれる。
だから私は、余計に口を閉ざしてしまった。