嘘つきなあなたに、もう一度恋をしますか?~冷たい仮面の下の真実~

第13章 もう一つの顔


昼下がりの邸宅。
紗良は侍女に呼ばれ、応接室に向かった。
そこには父の側近である秘書が待っており、封筒を差し出した。

「奥さまへ。会長からお預かりしております」

怪訝に思いながら受け取った封筒の中には、一通の書簡と数枚の契約書の写しが入っていた。
震える手で文面を追った瞬間、紗良の瞳が大きく揺れる。

――鳳条と西園寺の新規協定案。
それは神宮寺グループの動きを封じるための極秘の協定だった。



「……怜司さんが、こんなことを……?」

紗良の心に疑念と驚きが入り混じる。
(父と協定を? なぜ私には何も言わなかったの……)

すると、側近が言葉を添えた。
「会長はおっしゃっていました。怜司さまは奥さまを守るために、あえてすべてを一人で背負っているのだと」



応接室の窓辺に立ち尽くしながら、紗良は震える手を胸に当てた。
冷たく突き放されたあの言葉。
帰宅しなくなった日々。
――すべては、自分を巻き込まないため?

「そんな……」

信じたいのに、心の奥に残る玲奈の声が再び囁く。
――怜司さまは、私を選ぶでしょう。



その夜。
帰宅した怜司はいつものように表情を崩さず、ただ短く「疲れた」と言って背広を脱いだ。
紗良は声をかけようとしたが、唇が震えて言葉にならなかった。

(怜司さん……あなたは本当に、私を守るために冷たくしているの?
それとも、もう心が離れてしまったの……?)

怜司の背中を見つめる視線は揺れ続け、疑念と希望が入り混じる。



廊下に消えていく夫の後ろ姿を見送りながら、紗良は胸の奥で小さく呟いた。
「……本当のあなたを、知りたい」

冷たい仮面の下に隠された、もう一つの顔。
その真実に触れる日が近づいていることを、まだ彼女は知らなかった。
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