最強で、最孤
「始め!」

やはり主審の声は自分に響く。

対戦相手は、私より身長が一回りほど大きい。

さあ、どう攻略するか。

瑠那の心の中、頭の中はこの状況を楽しんでいた。

相手が面を打ってきた。

でも大丈夫。瑠那の得意技、面返し胴。

——きれいに決まった。

「胴あり!」

一本目。

呼吸もできないようなこの状況、団体戦特有の緊張感、あぁ、なんて楽しいんだろう。



そのあと、長く静かな、激しい攻防が続いた。

息を呑む音だけが聞こえる。

ふと、視界の端に仲間たちが見えた。

全員が、涙をこらえながら瑠那を見つめていた。

(みんな、私が一本取るたびに泣いてる。
 だったら、もっと泣かせてあげる!!!)

最後の一歩を踏み込む。

強く、鋭く、迷いなく。

「メーーーーーーーーーーン!!!!!!」

「面あり!」

「勝負あり!」



礼をして、瑠那は試合場をあとにした。

勝ったのに、心は重い。



待機場所に戻った。

みんな無言のまま。

すると、加藤つぶやいた。

「ごめん......やっぱり、私たちじゃ通用しなかった」

「でも、瑠那が勝ってくれたから、すごい救われた。」

「......ありがとう、瑠那」

瑠那は、一人ひとりの顔を見た。

そして、ゆっくりと、言葉を置いた。

「ありがとう。みんなと、いや、チームで試合できてよかった。」

その瞬間、佐伯が声を震わせていった。

「なにそれ......もう、瑠那じゃないみたいじゃん

 前だったら、『あんたらが弱いから負けたんでしょ』とか言ってたくせに......!」

瑠那はふっと笑った。

「そうだったね。でも、今はそんな感情浮いてこない。みんな、ほんとにありがとう」
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