おやすみなさい、いい夢を。


「君ら、同級生なんだろ。なんで中野さんだけ、そんなに男慣れしてない風なんだ?」

何気なく投げた問いに、理緒が困ったように笑った。


その横で、中野さんはぽつりと口を開く。

「……理緒は予備校とかでも男子と普通に話すし、男子校の文化祭とかも行ってたタイプだし。
中学の時は普通に彼氏もいて。……私とは違うんです」

意外な告白に、思わず眉が動く。
「違うって?」

彼女は俯き、指先をいじりながら言葉を探すように続けた。
「……私、全然そういうの慣れてなくて。男の人と話すだけで緊張するし。だから理緒みたいに堂々とはできないんです」

その声音には劣等感と羨望が滲んでいた。
視線を落とし、いじる指先。声が震えるほどに不器用な様子を目の当たりにして、胸の奥でため息が漏れる。

ーー大丈夫か、この子は。
大学に入ったら、真っ先に変な男に目をつけられるだろう。
断ることに慣れていない。人を疑うことも下手そうだ。言葉巧みに近づかれたら、簡単に巻き込まれてしまう。

本当に危なっかしい。

……いや、下手をすれば「セックスって何ですか?」なんて素で聞きかねない。
……いや馬鹿か。そんな想像をすること自体が間違ってる。落ち着け、御崎。

額に手を当て、大きく息を吐く。

……ほんと、こういう子供を持つ父親は気が気じゃないだろうな。

俺だったら、娘を無断外出禁止にする。塾も大学も送り迎え必須、スマホは位置情報共有させて、門限は日没まで。
……いや、それじゃ息苦しくて反発されるに決まってる。

自嘲するように小さく笑う。
(守りたいと思ったところで、結局縛るだけなんだよな……)







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