危険な隣人たち

飛鳥side

その後、飛鳥はまるで何もないかのように静かに言った。
「竜也があんなに言ってるのに、どうして選べないんだ?」

彼の目には、痛みと共に冷たい絶望が滲んでいた。
その言葉が、ゆいの心に鋭く刺さる。

「お前が選べないなら、俺はもう……」

その言葉の続きを口にすることなく、飛鳥は静かに後ろを向いて歩き出した。
その姿が、竜也と同じようにどこか遠くへ向かって消えていくように感じられた。

ゆいは、もう何も言えなかった。
そのまま立ち尽くし、二人の姿が見えなくなるまで動けなかった。

彼らを傷つけてしまった。
ゆいはそのことを自覚していた。
でも、彼女にはどうしても、選べなかった。
どちらを選んでも、もう戻れない場所に来てしまったことに気づいていたから。
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