危険な隣人たち

第十三章 運命の選択

ゆいは静かに目を閉じた。
自分の中で、ひとつの決断が下った瞬間だった。
竜也を選ぶ――
その言葉を口にしたとき、心の中に芽生えた安堵感があった。それでも、同時に重い責任を感じていた。
飛鳥の目を見たとき、彼の心の痛みがひしひしと伝わってきた。

「私は……」
ゆいの声が震えそうになったが、なんとか続けた。
「竜也を選びます。」

その言葉を発した瞬間、部屋が静寂に包まれた。
竜也は一瞬、驚きの表情を浮かべ、すぐにその表情を隠した。
飛鳥の顔には、予想以上の痛みが走ったようだった。
彼の瞳には、明らかに怒りが滲んでいる。だが、同時にその怒りの中にある深い悲しみも見て取れた。

竜也はゆっくりと歩み寄り、その目をゆいと合わせた。
「お前が選んだのは、俺だな?」
その問いかけには、確信が込められていた。

ゆいは静かに頷いた。
「はい。」

その瞬間、竜也の顔に浮かんだ笑顔は、ほんのわずかに優しさを漂わせた。
「ありがとう。」
その言葉だけで、ゆいは自分が選んだ道が間違っていなかったと確信した。

一方で、飛鳥の表情は硬直したままだった。
その目に浮かんだのは、強い決意――それと同時に、彼自身の中に渦巻く怒りと無力感だった。
「お前、ほんとうに俺を選ばないのか?」
飛鳥はその言葉を発した瞬間、周囲の空気が重くなるのを感じた。

ゆいは飛鳥を見つめ、心の中で言い訳をしようとしたが、どうしてもその言葉が出なかった。
「ごめんなさい……」
その謝罪の言葉が、彼女の口から自然に出てきた。

飛鳥は目を閉じ、静かに深呼吸をした。
「わかってる。」
その一言だけが返ってきた。
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