危険な隣人たち

飛鳥side

飛鳥はその場に立ち尽くしていた。
心の中で怒りが膨らみ、頭が真っ白になりそうだった。
どうして、俺じゃなかったんだ?
その問いかけが、永遠に消えそうにない。

ゆいを守るという気持ちが、彼の中ではいつも最優先だった。
彼女を手に入れることができなければ、自分の存在意義は何もないのではないかと思うほどだった。

「お前は、俺の全てだった。」
飛鳥は静かに呟いた。

その言葉が、ゆいの心に深く刺さる。
でも、今はもう選べない。
飛鳥には言えなかった。
彼がどれだけ自分を求めていたのか、どれだけ自分の中で葛藤していたのか、それを知っていたからこそ、選べなかった。

飛鳥は一度ゆっくりと目を閉じ、その場を後にした。
彼が去るその後ろ姿は、どこか孤独に見えた。
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