執拗に愛されて、愛して
 少しオフィスから離れて自動販売機がある所まで向かって、雅に電話を掛けると『はい』と、寝起きのがさがさした声が聞こえてきた。


「もしもし?寝てた?ごめん。」

『…何。緊急?』

「…今日、同期の人達が昇進のお礼に飲み会開いてくれるって言うんだけど、行ってきてもいいかな?」

『…お前さ、仕事の事は優先する癖に、俺との事は後回しだよな。』


 思ったよりも雅の低くて鋭い声に驚いた。男もいる?とか聞かれて、ダメと言われたりすることは予想していたけれど、思った以上に怒っていて、それも飲み会がどうこうの話じゃない。

 優先順位の事を言いだしてきた辺り、雅の中で何かが溜まっている事を察した。吐かれた言葉にどう返せばいいかは分からない。


『仕事が忙しいから待ってって言う割に同期様とは飲みに行くの?それで俺との事はちゃんと話す時間も無いんだな。』

「それは…、私の為にってしてくれる事無碍には出来ないでしょ?」

『その思いやり俺にも欲しいくらいだわ。』


 結婚の事とか、確かに一方的に待たせたまま何も解決はしていないけれど、雅なら待ってくれると思ってた。会社の人はそうはいかないけれど、雅には甘えられて、それがいつからか雑に扱っていると思われていたのかもしれない。

 自分では当然そんなつもりなかったけれど、雅にそう思わせた事が問題だ。
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