執拗に愛されて、愛して
「そう言えば育休は何で取ろうと思ったの?」

「あ?何急に。」

「急なのはあんたじゃない。仕事休むまでしてくれるなんて思ってなかった。」


 煙草辞めるのに苦労するかと思ったけど、雅は煙草をやめて今は飴玉を口に放り込んでいる。飴玉が世界一似合わない男がこんな所に存在したとは。


「別に、また夏帆の事だからしんどいとか言わずイライラされて当たられるのがだるかっただけ。」

「それは…、否定できないけど…。」

「後は単純に俺も親なのに子供の事何も知りませんって言う恥ずかしい親にはなりたくなかっただけ。別に家庭の為に一生懸命働いている父親たちを否定する気も無いけど、俺がガキだった時は、仕事よりも傍に居てほしかったって思ってたから。」


 雅の家庭環境の事を思い出した。そんな風に話すのは初めて見たけど、そう思っていた事も知らなかった。


「…会いたいと思う?お父さんに。」

「別に。俺からしたらもう顔も覚えてない人だから。どうでもいい、とまでは言わないけどもう会わなくても良いかな。向こうも来られても困るだろうし。」

「そっか。」


 お父さんの方は会いたいと思っていると思うよなんてそんなの口が裂けても言えない。実際そうか分からない状態で会っても、そうじゃなかった時また傷付くのは雅だから。こういう家族関係の雅の気持ちは、円満に過ごしてきた私には理解しようとしたとて出来ないものだ。
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