執拗に愛されて、愛して
「俺、夏帆ちゃんの事気になってるんだけど。」


 そう言われ玲くんと見つめ合うと、素敵な笑顔を向けられたけど、流石に胡散臭すぎて信じる気にはなれなかった。

 玲くんは私なんかを好きになる様な人では無いし、この人は私以上に恋人よりも仕事を優先する人だ。自分で持ったお店の事だけを考えていて、恋愛なんて面倒だって言う人なのをよく理解しているつもりだった。

 そんな玲くんに私は少し笑って「もう、やめてよ。思わず勘違いしそうになっちゃった」と言いながらお酒を飲み干す。

 そのまま「お会計ね」といって財布を取り出すと、玲くんも笑っていた。


「本気なのに。気が変わったらいつでも連絡して。待ってるから。」

「気が向いたらね。ご馳走様。」


 お会計を済ませると、いつもなら雅に声を掛けて帰るのだけど、今日は何も言わずにお店から出た。

 このバーに恋愛がしたくて来ているわけじゃないのに、何でこんな面倒な事になってしまうのか。軽く溜息を吐いて、その日は真っ直ぐ帰路についた。
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