君と始める最後の恋
「そう言えば話して良いって言われたから話すんだけどさ。」

「はい?」


 突然改まって話す先輩の言葉に耳を傾けつつ、伸びない様に美味しく食べたいので手は止める事無くラーメンを箸で掴んで口にする。


「沙羅、妊娠したって。」

「ええええええ!」


 思わぬ報告に驚きで少し大きい声が出る。周りに人がいるのに声が出た事が恥ずかしくて両手で口元を抑えた。先輩は呆れた様な表情でこちらを見ている。


「え、すごい嬉しい。おめでたいですね!」

「今は悪阻とかがしんどくて連絡出来ないって話してたし、今度会いに行こう。2人でお祝い買って。」


 まさかのお誘いににやけてしまう。こんな風にお誘い受けるの久しぶりだ。一ノ瀬先輩だけでも会いに行けるのに”一緒に”と言ってくれるのが凄く嬉しい。


「デートですか?」

「ただの買い物。」

「デートですよね!」

「うざ。」


 うざと言いながらも笑ってくれる先輩が愛おしい。デートって響きを嫌がってる様子もないし、こうやって話して一緒にいるとやっぱりどんどん好きになる。それに先輩も私と一緒が嫌じゃないんじゃないかななんて、最近少しずつ思えてきていた。

 わかってますか、先輩。私の前でも最近凄く優しい表情をして笑ってくれているの。言ったら意識して、2度としてくれなくなりそうなので、私の心の中に仕舞い込んでおくことにした。
< 103 / 426 >

この作品をシェア

pagetop