君と始める最後の恋
「それと桜庭さんにはお話が別であって、お時間作っていただきたいんですけど。」

「え？」

「これから、少し話せませんか？」


　急な呼び出しに少し驚いた。
　休憩中にこんな風に呼ばれる事、滅多にないから。

　志織ちゃんを見ると「ちょっと、余計な事は言わないでよね。今先輩大事な時期なんだから」と何の話か分かっている様に牽制した。

　志織ちゃん、話が読めないよ…。

　私が困惑しているのを置いてけぼりで、小川くんはそんな志織ちゃんに真剣な表情で「俺にとっても大事な時期だよ。ここ逃したら伝えられずに終わる。」と言葉を返していた。

　だから何の話なのさ！とそう言いたい気持ちを堪えて、席を立ち上がる。


「とりあえず行こ。」


　そう言って2人きりになれる場所に向かう。
　2人きりになれる場所と言えば、資料室。
　あそこなら滅多に人が来ないから。





𓂃𓈒𓂂𓏸





　資料室で隣同士に座って話をする事にした。人が居なくて静かで、小川くんの声がよく聞こえる。廊下を誰かが通る事もそんなに無いから静かだ。


「桜庭さん、一ノ瀬さんのこと、好きですか？」


　知られているだろうなとは思いつつ避けてきた話題だったのだけれど、まさかその話だったとは。若干の照れ臭さを感じる。


「やっぱ、わかっちゃうよね。」


　そう苦笑いすると小川くんは笑う事無く真剣な表情をしていた。

　むしろ少し傷ついた様なそんな顔。

　私には小川くんが何故そんな表情をするのか分からなかった。
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