君と始める最後の恋
 スーツ売り場に行きそこでネクタイを見ていると、先輩は真剣にいくつか手に取りながら悩んでいる。


「スーツは紺色でベストも紺色だから色は揃えたいんだけど、柄があるものが良いか無いものにするか悩んでるんだよね。」

「紺色…なるほど…。」


 私も真剣に先輩の隣で見てしまう。隣で一緒にああでもないこうでもないって言いながら一緒に選ぶのは結構楽しい。きっと先輩の事だろうから、何を付けても似合ってしまいそうな気はするけれど。


「何かお悩みですか?」


 男性店員の優しい声で私も先輩もそちらに顔を向ける。表情も優しくてスマートにスーツを着こなしている姿は上から下まで清潔感もあってかなりの爽やかさ、ちょうど紺色のスーツを来ている。


「あ、大丈夫です。彼女に選んでもらうので。」

「かしこまりました。ごゆっくり。」


 そう言いながら店員さんは下がっていく。

 彼女に選んでもらうのでって、そういう意味の彼女ではないって分かってるのにニヤけちゃいそうになる。

 それにしても先輩のスーツもあんな感じなのかな、きっと格好良いんだろうなと、想像しながら先程の店員さんの姿を見ていると、先輩が「ねぇ」と声を掛けてくる。


「はいはい?」

「こっちに集中して。」


 そう言われて先輩の顔を見ると目が合って少し恥ずかしくなる。先輩は特にいつもどおりの表情だ。
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