さくらびと。美桜 番外編(2)
桜の花びらが舞い落ちる四月、二人の新居に引っ越した日。
美桜は手書きの看板を玄関に掛けた。
「七瀬家・有澤家合同!幸せ爆発中♡」という文字を見て裕紀は苦笑いしながらも、その手を強く握り返した。
「ただいま」
帰宅の挨拶とともに漂ってくる夕飯の香り。
美桜はエプロン姿で迎えてくれる。
「おかえり〜!今日はカレーだよ」という彼女の笑顔が何よりの癒しだった。
初めのうちは順調だった。
美桜も大学院で研究やサークルを続けながら家事をこなし、裕紀の健康管理にも気を配っていた。
二人で過ごす時間は限られていたけれど、それ以上の充実感があった。
「これからの人生を二人で歩んでいこうね」
そう言って微笑み合う日々は幸福そのものだった。