ぜんぶ、ちょうだい。



「あ、こまちゃんおはよー」



ひまちゃんの声。

いつも通りの、明るくて優しい声。



「おはよう、ひまちゃんっ。今日は一人で昇降口行ってくるねっ」

「分かったよーって……なんか元気ない?」



鋭い、ひまちゃん。さすが、私の親友。


でも、まだ言えていない。清水のこと。 あのキスのこと。「大っ嫌い」って叫んだこと。


多分、ひまちゃんは気づいてた。清水の気持ちに。2人は知っていて、私だけが知らなかった。


……それが、ちょっと悔しくて、ちょっと悲しくて、だから、言えない。



「先輩に会えてなかったからかなー? 先輩に元気貰ってくるねっ」



そう言って、私は教室を飛び出した。

逃げるように。誤魔化すように。


先輩。 会いたい。


会ったら、きっと忘れられる。

清水のことも、あの夜のことも、全部、元通りになる。



……そう信じたい。


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