ぜんぶ、ちょうだい。



「今日、ラーメン行くのなし」

「え、マジ? ごめんって。でもさ、なんでそんなイライラしてんの?」



秦は、少しだけ首をかしげる。

まるで、俺自身よりも俺のことを分かってるみたいな顔。


その顔面に、絵の具でもつけてやろうかと思ったけど。


……なんとなく、やめた。

作業も、全然進まない。


それに、たぶん。

俺がこういう話をできる相手なんて、秦くらいしか、いない。


ふと、そう思った瞬間。

筆が、ピタリと止まった。


どう言えばいいのか、何から話せばいいのか。

悩んで、悩んで。

結局、特大のため息をついて、秦の顔を見た。



「なに?」



ニコニコ笑ってる秦。


話すのは、癪だ。正直、すごく癪だけど。



「……俺、吉川に避けられてると思う」

「ええ、急展開」

「修学旅行あたりから、様子おかしい」



筆を置いて、背中を壁に預ける。そのまま、天井を見上げた。


「どうせさ、かおが女子と映ってる写真とか、どっかで見てへこんでんじゃないの?」

「それだけで、へこむタイプじゃない」

「じゃあさ。かおは、吉川さんがいないからイライラしてんの?」

「……別に、そういうわけじゃなくて」

「じゃあ、なに?」



待ってないで、会いに行けばいいだろ。


そう言って、秦は看板に視線を戻した。


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