推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜
姉の付き添いで、この事務所のグループのライブを見に行ったら、この事務所の関係者にスカウトされた。
あれよあれよという間に、事務所の仲間入り。
嘘のようなホントの話。
後から知ったことだが、うちの事務所はスカウトは行っていない。
後にも先にもあの一度きり。
書類審査も、面接も、実技審査もなくうちに入るルートは一般的ではなかった。
すべてがトントン拍子で進んでいった。
瞬く間に、あの日、客席から見ていた人たちと同じステージに並んだ。
そして、泥臭く努力する者が報われないこの世界で、俺はやっかみと嫉妬を買うには格好の存在だった