隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 こんな身勝手なお願いなんて、森野にとっては迷惑以外の何物でもないだろう。
 いきなりそんなことを言われても、森野が受け入れるわけがない。

(私、なんてこと言っちゃったんだろう……)

 茉結莉は急に冷静になると、慌てて大きく頭を下げた。

「ご、ごめんなさい。そうですよね。森野さんだって、恋人とかいらっしゃいますよね。私、森野さんを困らせるようなこと言って……。さっきのことは忘れてください」

 恥ずかしすぎて、もう森野の顔は見ることができない。
 茉結莉はくるりと背中を向けて、その場を立ち去ろうとした。
 でもその瞬間、茉結莉の左手は、ぐっと森野に掴まれる。

 はっと振り返った茉結莉の前で、森野の頬がややピンクに染まって見えたのは、街灯のせいだろうか。
 戸惑いながら立ちすくむ茉結莉の前で、森野はスッと腰を上げると、茉結莉の左手をそっと引き寄せる。

「わかった」
「え……」
「じゃあ今夜は、君に最高の恋をプレゼントしよう」

 森野の低い声が茉結莉の胸の奥を叩いた。
 森野はさっきまでとは全く違う艶やかな瞳を細めると、茉結莉の左手にそっとキスを落としたのだ。
< 13 / 61 >

この作品をシェア

pagetop