明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
そんな時だった。
ふと気づいた、部屋の隅にたたずむ侍姿の幽霊。
玲子には、霊が視える。
それが己に備わった“異能”なのか“呪い”なのか、判断はつかない。
ただ一つだけ分かっているのは、視えてしまうものは、大抵“哀しみ”をまとっているということ。
その幽霊もまた、誰からも気づかれず、孤独の底に沈んでいるようだった。
玲子の中では、幽霊という存在は“恐れるべきもの”ではなく、“自分と似た、世界に馴染めぬ者”。
そして、目の前のこの侍の幽霊である藤堂一将は、確かに玲子に似ていた。
誰からも見えず、誰からも呼ばれず。ただそこにいるだけ。
玲子はその姿に、ひとりの「友達」を見出した気がしていた。
一将と名乗る幽霊は、凛々しくも親しみを湛えた面差しをしており、不思議と居心地がよかった。
「孫の結婚相手に」と、冗談めかす一将の口調に、玲子は思わず微笑む。けれどすぐに、少しだけ陰りのある瞳を落とした。
「自ら結婚相手を望んでは、父に叱られます。……わたくしは、榊原のハズレ者ですから、何かを欲してはバチが当たります」
それは玲子の、深い本音だった。
何かを望んではいけないと思っていた。
笑ってはいけないと思っていた。
ただ黙って、生きていればそれでいいと、そう教えられてきた。
『玲子殿……』
それ以上の言葉はなかったが、一将の目には静かな慈愛が宿っていた。
ふと気づいた、部屋の隅にたたずむ侍姿の幽霊。
玲子には、霊が視える。
それが己に備わった“異能”なのか“呪い”なのか、判断はつかない。
ただ一つだけ分かっているのは、視えてしまうものは、大抵“哀しみ”をまとっているということ。
その幽霊もまた、誰からも気づかれず、孤独の底に沈んでいるようだった。
玲子の中では、幽霊という存在は“恐れるべきもの”ではなく、“自分と似た、世界に馴染めぬ者”。
そして、目の前のこの侍の幽霊である藤堂一将は、確かに玲子に似ていた。
誰からも見えず、誰からも呼ばれず。ただそこにいるだけ。
玲子はその姿に、ひとりの「友達」を見出した気がしていた。
一将と名乗る幽霊は、凛々しくも親しみを湛えた面差しをしており、不思議と居心地がよかった。
「孫の結婚相手に」と、冗談めかす一将の口調に、玲子は思わず微笑む。けれどすぐに、少しだけ陰りのある瞳を落とした。
「自ら結婚相手を望んでは、父に叱られます。……わたくしは、榊原のハズレ者ですから、何かを欲してはバチが当たります」
それは玲子の、深い本音だった。
何かを望んではいけないと思っていた。
笑ってはいけないと思っていた。
ただ黙って、生きていればそれでいいと、そう教えられてきた。
『玲子殿……』
それ以上の言葉はなかったが、一将の目には静かな慈愛が宿っていた。