明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
一将は尚文の前に回り込み、姿なき身で懸命に行く手を塞ごうとする。
空気がざらりと揺れ、一瞬、尚文が足を止める。
「……ん?」
尚文が不思議そうに辺りを見回した。だが、それだけだった。すぐに小さく肩をすくめ、再び歩き出す。
『ぬうっ、何故気づかぬ! 離れてしまっては……玲子殿を守れぬというのに!』
一将の姿は、尚文が角を曲がった瞬間に、煙のようにかき消える。
尚文の背中が人波に紛れて見えなくなった後も、玲子はしばらくその方向を見つめていた。
不安というほどではないけれど、どこか心がそわそわして落ち着かない。
胸の奥に小石が詰まっているような、そんな感じがする。
けれど、それを口にするのは我が儘だと思って、玲子は首を横に振った。
「……大丈夫。すぐ戻っていらっしゃるわ」
そう自分に言い聞かせ、玲子は小物屋の店内へと足を踏み入れる。
視線はすぐに、飾り棚に並ぶ色とりどりの羽織紐へと吸い寄せられた。
「……素敵……。一将様に似合うもの、どれかしら……」
いつしか不安は遠のき、玲子は夢中で羽織紐を選び始める。
けれどその時、通りの向こうでひとりの女性が足を止め、じっと玲子を見つめていた。
それが継母の百合絵だと、玲子はまだ気づいていない。
空気がざらりと揺れ、一瞬、尚文が足を止める。
「……ん?」
尚文が不思議そうに辺りを見回した。だが、それだけだった。すぐに小さく肩をすくめ、再び歩き出す。
『ぬうっ、何故気づかぬ! 離れてしまっては……玲子殿を守れぬというのに!』
一将の姿は、尚文が角を曲がった瞬間に、煙のようにかき消える。
尚文の背中が人波に紛れて見えなくなった後も、玲子はしばらくその方向を見つめていた。
不安というほどではないけれど、どこか心がそわそわして落ち着かない。
胸の奥に小石が詰まっているような、そんな感じがする。
けれど、それを口にするのは我が儘だと思って、玲子は首を横に振った。
「……大丈夫。すぐ戻っていらっしゃるわ」
そう自分に言い聞かせ、玲子は小物屋の店内へと足を踏み入れる。
視線はすぐに、飾り棚に並ぶ色とりどりの羽織紐へと吸い寄せられた。
「……素敵……。一将様に似合うもの、どれかしら……」
いつしか不安は遠のき、玲子は夢中で羽織紐を選び始める。
けれどその時、通りの向こうでひとりの女性が足を止め、じっと玲子を見つめていた。
それが継母の百合絵だと、玲子はまだ気づいていない。