明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
一斉に集まった冷たい視線が、痛いほど突き刺さり、玲子の身体が震える。
この場でやってはならない事をしてしまったのだと、全身が告げていた。
「君は……」
将吾の手が、玲子に向かって伸びてくる。
「……ご、ごめんなさい!」
玲子はその手を避けるように踵を返し、そのまま駆け出した。
割れたグラスの破片、注がれた視線、誰かの囁き。
全部から逃れるように……。
(どうしよう……。藤堂将吾様に手を上げたと、お父様に知られたら、どんなお叱りを受けるのだろうか。きっと、お義母様から、お父様に告げ口をされる)
不安に駆られた玲子の心臓は、バクバクと音を立て、冷たい汗が頬を伝う。