明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
 一将の目元に、ほんのりと笑みが戻る。

『……その気持ち、ありがたい。じゃが気をつけろ。輝明は裏でことを動かすのに、迷いのない男じゃ』

「はい……」

『あの頃は、息子である輝明を信用し、頼りにしていたのだが、後になって考えてみると色々とおかしな点に気づいたのだ』

「おかしな点ですか?」
 と玲子は小首をかしげた。一将は話しを続ける。

『実は、拙者の飲み薬を管理してくれていたのが輝明でな。ある時から薬を飲んでいるにも拘わらず、調子を崩すことが出て来たのだ』

「そんな事が……」
 にわかには信じられない玲子だったが、一将の表情は真剣そのものだ。

『拙者が死を迎えたときも、輝明が用意したものを飲んでいる。今回、玲子殿にしたことを考えると、拙者の時も、ほんとうに病だったのか……。のう、玲子殿。お主の目で、見てくれぬか』

 玲子はしっかりと頷いた。

「はい……わたくしにできることなら、お手伝いさせて頂きます」

 一将は、風のように静かに微笑んだ。

『……それでこそ、じゃ。頼むぞ』

 そう言い残し、ふっと立ち昇るようにして、一将は姿を消した。

 玲子の胸に、言い知れぬ不安と、確かな決意が同時に宿っていた。

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